数のマジック
「東京新聞」2021年2月3日(水)「本音のコラム」
数のマジック 斎藤美奈子(文芸評論家)
東京都の新型コロナウイルス新規陽性者数は減少を続け、2日は500人台だった。緊急事態宣言が奏功したのだとしても減り方が急すぎる。ちょっとおかしくない?
検査方法が変わったためだという意見がネット上では取りざたされている。1月22日、保健所の負担軽減策として、東京都は「積極的疫学調査の規模を縮小する」との方針を保健所に通知した(神奈川県も同様の通知を出している)。それが関係していると。
積極的疫学調査とは、陽性者からの聞き取りで濃厚接触者を追跡する調査のこと。市区町村をまたぐ濃厚接触者も、勤務先の濃厚接触者も調査しない。感染の疑いが濃い部分の検査をやめたら無症状の感染者はノーカウント。見かけ上の陽性者はそりゃ減るよね。
以上を私は都の保健所員の悲鳴のようなツイートで知った。PCR検査態勢が不十分な上、濃厚接触者の調査まで放棄したら、無症状の市中感染はさらに広がる。このままでいいのか、と。
見かけ上の陽性者の減少は人々を安堵させる。Go To 事業を再開させたい、東京五輪も開催したい、そのためには感染者を一人でも少なく見せたい。為政者のそんな思惑とも一致する。
疑心暗鬼かもしれないが、それでもやはり事実を知りたい。都の検査方針の変更と陽性者減の間に因果関係はないのだろうか。
☆
「都の検査方法と陽性者減の間に因果関係は」あるのかないのか発表されているわけではなく、斎藤さん自身「都の保健所員の悲鳴のようなツイートで知った」と仰る通り、現実は不明の部分がある。
とはいえ、「緊急事態宣言」が出てすぐの陽性者の急な減少に疑問を持った方も多いのではないだろうか?
安心する気持ちもある反面、ちょっとおかしくない? と感じたのではないだろうか。
濃厚接触者や海外からの日本入国者が2週間の自宅やホテル待機を命じられるのは、潜伏期間から計算して2週間は様子をみなければいけないからのはず。
ということは、「緊急事態宣言」が出されて人の流れが少なくなり、2週間ほど経ってからの数値が、参考になる数値のはじめのはじめのはず。
しかも、人の流れが少なくなり始めた2週間の内の人の動きによる感染が、また数値として反映されるのは、さらに2週間は見なければならないだろう。
そう考えると(考えるまでもなく)、「“緊急事態宣言”を出したことによる感染者数の変化」は、宣言が出されて1ヵ月経ってからやっと参考になる数値が出始めるのではないだろうか。
だから、はじめから「緊急事態宣言」の期限が一ヵ月というのは、「なにをしようとしているの?」と感じた。
本当に “緊急事態” だと思っているのであれば、数か月単位で宣言を出し、その上で数値が明らかに減ってきた、宣言の効果が見えてきたときに、宣言を引っ込めるものだと思う。
だから、斎藤さんが感じられたように、「緊急事態宣言」後すぐに数値の変化が表われたことに首をかしげていた。
数字は、データは大事だ。
でも、従来と違うデータのとり方をしていながら、旧と新のデータを比較しても、現実を表わしてはいない。
人びとを安心した気持ちにさせるため、自分たちのやりたいことを推し進めるため、「ウイルスに勝った」などと言うために現場の態勢や数値をいじくることは、今後のためにも決して良いことではない。
☆
そういうことをキチンと言えるのは女性の方が多い。
なぜなら、いのちに直接関係することだから。
いのちに直接関係することは、男性よりも女性の方が敏感だ(「男性蔑視だ!」なんて言わないでくださいね)。
だから、おかしいと思うことはおかしいと言うし、納得できないことは確認するし、間違っていると思うところは追及する。
必然、会議の時間は伸びるかもしれない。けれど建設的だ。
そもそも、男性ばかりの会議だって、会議の時間が長い。
しかも、それほど建設的でない。
会議中、銀座に繰り出すことを考えているのではないだろうか。
せっかく集まって話し合っているのだから・・・
安心させるために会議をするのではなく、現実を知るための場ではないだろうか。
はじめに結論ありきで話し合うものではないだろう。
ウイルスに勝った負けたで物事を考える・結果を表わすのは気持ちが悪い。勝ち負けの話ではないのだから。
などと思う。
って、ブログの文章が伸びました(‐人‐)
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