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2021年1月11日 (月)

自然は曲線を創り 人間は直線を創る

人工物の総量、自然を超える~イスラエルのチーム試算~
 人間がこれまでに作り出したコンクリートやプラスチックなどの総量は1兆トンを上回り、森林や植物など他の生物由来のものよりも多くなる見込みだー。イスラエルのワイツマン科学研究所のチームがこんな試算をまとめた。こうした人工物の量は人間の消費活動や開発に起因して、過去100年間で急激に伸びている。人間が地球に与える影響がいかに大きいかを示す結果。
(中略)
 分析によると、1900年の人工物は350億トンだったが、太平洋戦争後から建築材料がれんがからコンクリートに代わったり、道路がアスファルトで舗装されたりするなどして急増した。
 2020年までの累計で、建物のほか道路などインフラ分野で1兆1000億トン、プラスチック製品はごみになった分も含めて80億トンに到達した。一方で森林や植物の総量は9000億トン、陸と海に生息する生き物は40億トンにとどまっている。分析結果は英科学誌ネイチャーに発表した。

(解説)人間の活動と影響
人間は地球の資源を利用して高度な文明を構築する一方、自然環境に多大な負荷を与えてきた。化石燃料の利用で多くの二酸化炭素を排出して地球温暖化を加速させ、海にはプラスチックごみを流出。森林伐採や水質汚染も深刻化している。こうした活動により地球が激変している時代を、新たな地質年代として「人新世」と呼ぼうとする考え方も出てきている。
(「東京新聞」2021年1月10日朝刊より)

 ☆ ☆ ☆

 人間の生活・生存を中心とした活動が、自然に与える影響の大きさが語られて久しい(トランプ大統領をはじめとして、因果関係を否定する人びとも多くいるが)。
 この地球上に、生命体そのものの総数は決まっていると聞く。ということは、この地球上に70億を超える個体が生存している人間が、他の生命体や自然に、なんらかの(良くない)影響を与えていることは十分に考えられる。
 地球の誕生から45億年前後の経過が予測されているが、自然物を人工物が上回ったのは、ここ100年ほどの話。そのスピードは、進化・発展のスピードであるとともに、破壊のスピードでもある。また、急激な進化・発展・破壊のエネルギーによって、ウイルスが拡散・蔓延・変化が引き起こされるのも必然のこと。「この3週間が勝負」「一か月の非常事態宣言」など言うけれど、現在(いま)起きていることの背景には、この100年の活動がある。もっと長い地球生命の歴史がある。人間の尺度で考えた希望的観測とは切り離して考えなければいけないのではないだろうか、とも想う。
 新聞の解説に「人新世(ひとしんせい)」という言葉が出てきた。地質学上の新世代の名称だそうだが、まだ確立された名称でも概念でもない。だが、人類の活動・行動が、新しい地質学上の世代を今現に構築しているということを受けて、新しい地質年代として「人新世」という言葉が生まれたようである。これから、より目にする言葉かもしれない。

 「人新世」は、地質学の言葉ではあるが、人間の経済活動と無関係ではない。
 この100年ほどの間の急激な変化は、資本主義経済によるものが大きい。気候変動のスピードを速めたのは資本主義であり、資本主義の更なる継続は、気候変動の促進のみならず、格差拡大、水不足や食糧危機も同時に引き起こす。今、世界の富裕層のトップ10%が二酸化炭素の半分以上を排出し、他方、下から50%の人びとは全体の7%しか輩出していないというデータもある。気候変動により水不足・食糧危機が進み、海面上昇によって住んでいる土地を奪われていくのは、先ずはその下から50%の人びとからである。
 それほどの人が生命の危機に直面しているのだら、それだけの人の総意や、選挙における票を集約すれば、現状に物申す大勢ができてしかるべきなのだが、そうはならない。民主主義の矛盾でもあり、私たち自身のことなかれ意識や資本主義こそ必要・大切という意識が、「人新世」という新しい年代を作り出している。(参考『人新世の「資本論」』 斎藤幸平著 集英社新書)
 これから何千年かを経たとき、現在の地層が遺すものはなんであろうか・・・ 

 湯川秀樹博士の言葉「自然は曲線を創り 人間は直線を創る」が表しているものの一端を見た気がする「人工物の総量、自然を超える」の記事だった。

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