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2021年1月10日 (日)

「集中しろ、大丈夫だ」

「東京新聞」2021年1月10日(日)朝刊 「筆洗」欄

 入団したばかりの若い投手がベテランの打者と相対する。1球目はボール。打者の頭に危うく当たるところだった。2球目も頭の近く。そして3球目も。乱闘になった▼試合後、打者は若い投手に尋ねた。「俺が何か悪いことをしたか」。投手は答えた。「あの時、サインをくれなかった」。子どもの時、サインを断られたのがよほど悲しかったのだろう▼逸話にこの人の燃えたぎる闘争心と度胸を思い出す。米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースのかつての名将トミー・ラソーダさんが亡くなった。93歳。1995年、野茂英雄投手がドジャースに入団した時の白髪で小柄な監督といえば、お分かりか。野茂さんを「息子」、親交のあった長嶋茂雄さん、星野仙一さんを「兄弟」と呼ぶなど日本球界とも深いゆかりがあった▼2度のワールドシリーズ制覇など監督としての成績は輝かしいが、投手としては0勝4敗。選手の面倒見の良さと野球、とりわけドジャースというチームへの情熱が監督という仕事に生きた。「俺の血管には(チームカラーの)ドジャーブルーの血が流れている」▼ファンを大切にしサインにも快く応じた。子どもの時のあの悲しい経験からである▼本気かどうか、ドジャースタジアムのマウンドの下に埋葬してほしいと語っていた。そこから投手に「集中しろ、大丈夫だ」と声をかけるのだそうだ。

 ☆

アメリカ大リーグに詳しくない私でも、野茂英雄投手の活躍と、彼のそばに寄り添っていたラソーダ監督の姿は記憶に残っている。

野茂投手の活躍は、当然自身の信念や努力によるところが大きいが、当時のドジャース監督がトミー・ラソーダ氏だったのは大きいと思う。

日本の球団・監督と決別し、ルールの確立していなかった当時、日本を飛び出してアメリカへ渡った。

野茂投手が所属していた球団関係者のみならず、マスコミも日本の野球ファンも、野茂投手の行動に不信感やアメリカでは通用しないだろうという思いが強かったように思う。

それを払しょくしたのが、野茂自身であり、彼を信頼し擁護し起用し続けたトミー・ラソーダ監督だった。

選手と監督・・・不思議な巡り合わせだと感じる。

野茂英雄とトミー・ラソーダ、松井秀喜と長嶋茂雄、イチローと仰木彬、大谷翔平と栗山英樹・・・

たまたま大リーグで活躍した(している)選手が並んだけれど、特に意識して書き出したわけではない。

監督としては結果を残せなかったけれど、高橋由伸監督の元でなければ、今の巨人の4番 岡本和真選手も育ってはいなかったのではないかと思う。

巡り合わせやタイミングで、大きく花開く選手がいる。

ということは、巡り合わせやタイミングゆえに、花開き損ねる選手もいるということ。

私たちが見ている花(才能が開花した選手)は、ほんの一握りなのだろう。

でも、だからといって花がないわけではない。

目に見えて開いている花を愛でるのは簡単だ。

まだ蕾の、あるいは大きくは開いていないけれど咲いている花はある、葉もまた潤いに満ちている。

そういうところへ想いを馳せることが、選手の才能を、能力を引き出すのだろう。

トミー・ラソーダさんは、そういう眼を持っていた方なのだと思う。

 ☆

明日(2021年1月11日)は「成人の日」。

「国民の祝日に関する法律」第2条には「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」とある。

ひどい条文だ💦

年を重ねた者は、その経験だけでは生きていけない。

若いエネルギーや発想が必要とされる。

若人は、情熱だけでは、やがて壁にぶちあたる。

そのときに、先行く人の歩みが方向を示してくれる。

“成人”とは “みずから生き抜”ける人になることではなく、“一人では生きていないことを自覚している人”ではないだろうか。

そのような意味で、一人では生きていないことを自覚している人は、どれくらいいることだろう。

(付記)
国民の祝日とされる日を、固定ではなく特定の月曜日に移動させる法律「ハッピーマンデー制度」は、どうにかならない(なくならない)ものだろうか・・・

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