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2020年12月 3日 (木)

いない いない ばあ

松谷みよ子さん(児童文学作家)が生み出された『いない いない ばあ』(絵は瀬川康男さん)が、2020年11月24日付の重版をもって、日本の絵本で初めてとなる「累計出版部数700万部」を突破しました。

1967年の初版から数えて339刷 701万7,500部になるそうです。

絵本のなかの動物たちが「いない いない ばあ」しています。

赤ちゃんは、急に出てくる顔に大喜びです。

「いない いない ばあ」する絵本はいくつもありますが、そのパイオニアです。

うちにも、松谷みよ子さんの絵本が何冊かあります(当然『いない いない ばあ』も)。

シンプルだけど何度も読み返したくなる絵本。

赤ちゃんも親も惹きつけられます。

ロングセラーですね。

『いない いない ばあ』700万部突破のニュースを読んで、以前読んだ文章を思い出しました。

徳間書店の本に挟まっている機関誌『子どもの本だより』(2018年7月/8月号 第25巻 146号)です。

頭は柔軟に! 編集部 田代 翠
 先日、東京・庭園美術館で行われていた「鹿島茂コレクション フランス絵本の世界展」を見にいきました。古書蒐集家(しゅうしゅうか)としても知られる仏文学者の鹿島茂氏の蔵書から選んだ絵本から、19世紀のフランスで絵本がどのように生まれ、20世紀にどう発展してきたかをたどることができる、興味深い展覧会でした。
 古書の現物を見られたのも良かったですが、印象深かったのは、絵本の発展の転換点には必ず編集者の斬新なアイディアがあったということ。たとえば19世紀半ばの編集者エッツェルは、本といえば「文章が主、絵は従」が当たり前だった当時、動物を主人公に、絵が主となる、現代にも通じる絵本を生み出しました。大雑把なストーリーだけをまず画家に伝え、絵を先に描いてもらい、文はあとからつける、という、当時としては型破りの方法を取ったとのこと。その絵本は大人気となったそうです。
 普段していることを当たり前と思わなければ、新しいアイディアを生む余地はいくらでもあるはず。発想を柔軟にし、いつもとちがうことをするよう心がけねば、と思わされました。

“絵本” というくらいだから、「絵が主 文は従」なのは当たり前と思いがちですが、そもそもその発想が画期的なことでした。

本といえば、読み物。「文が主 絵は従」というのが当たり前の時代に、そこを転換させた!

その発想と、実際に作ってみる英断がなかれば、現代に通じる“絵本”は生まれていなかったかもしれませんね。

であれば、松谷みよ子さんの数ある作品も、『いない いない ばあ』も、私たちが手にすることはなかった、かもしれません。

否、「絵が主 文は従」の “絵本” 自体は、エッツェルが生み出さなくても、そのうち誰かが手掛けていたことでしょう。

“絵本” なるものが生まれていても、そこに本当に子どもたちのための作品が生まれていたかというと、それもまた柔軟な発想、覚悟ある英断がなければ、『いない いない ばあ』はじめ多くの作品が生まれていなかったかもしれません。

絵本を作るのは、その多くが大人ですから、現代(いま)でも、「文が主 絵は従」の絵本がたくさんあります。

つい、言葉で説明してしまうのですよね。

赤ちゃんは、子どもは、絵だけで充分受け止めているのに。

松谷さんと周りの方が、赤ちゃんが喜ぶためのものを作りたい!と思い立ち、願って、やっとできたのが『いない いない ばあ』です。

そうか、松谷さんの絵本が柔かくて、大人的には少しあっさり感じたのは、余計な文がなかったからなのですね。

絵本に限らず、既に出来上がったものが手元にあると、それを作り出す背景に想いを馳せるということがあまりありません。

けれど、この世のあらゆるものの背景に、考えた人、作った人、売った人の想いや願いや努力があります。

いない いない しているものは、目に見えない、気付かないものだけれど、でも現にある。

そういうことを忘れてはいけないと思います。

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。
                       『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)より

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