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2020年9月13日 (日)

あなたは、どのようなメッセージを受け取りましたか?

大坂なおみ選手が、テニスの全米オープンを制しました。

決勝戦の対戦相手はビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)。

人種差別への抗議の意思を示すため、1回戦から決勝戦までの7試合のために、人種差別で被害に遭われた方々の名前が書かれたマスクをしていました。

途中で負けた場合、被害に遭われた方の名前が書かれたマスクが、世間の人びとの目に留まらないことになります。

7人の名前を、人種差別でいのちを奪われる人びとがいるという事実を、世間の人びとに知らせるため、彼女は闘ったのだと思います。

私たちも、全米オープンを制した大坂なおみ選手に「おめでとうございます」だけで済ませるわけにはいきません。

優勝のインタビューで、「マスクを通して伝えたかったメッセージを、あらためて教えてください」という質問に、

「あなたは どのようなメッセージを受け取りましたか?」と応えています。

私たち自身が尋ねられている、問われています。

人種差別に限らず、人の世の差別は、差別する側と差別される側だけの問題ではありません。

実数にすると、差別する側と差別される側の数は微々たるものかもしれません。

無視・無知(差別があるという現実を知らない、という意味での“無知”)・無関心の人びとの数に比べれば。

つまり、

「私は差別する気持ちは持ってない(だから差別者じゃない)」

「そんな差別があるなんて知らなかった」

「私には関係ないから」

というところに身を置く人びとが、差別を据え置いている、差別を助長しているのが現実なのだと思います。

そんな無視・無知・無関心の私たちが、

今起きていること(現実に起きている差別問題や、自分では差別しているつもりはなくても差別意識が内蔵されていることなど)を知ること、

差別意識とは、実は何の根拠もないところから湧き出ているもの。自己防衛・自己正当性から湧き出ているものだと自覚すること、

どこで生まれようとも、両親の国籍がどこであろうとも、性的思考が違っても、自分と生きる環境が違っても、それは差別の理由や根拠にはならないことだと、関心を持つこと、

など、知り、考え、伝えてゆくことが、これからを作っていくのではないでしょうか。

「あなたは どのようなメッセージを受け取りましたか?」という、大坂なおみ選手からのインタビューに、私たちは応えなければいけません。

 ☆

大坂なおみ選手が用意した7枚のマスク。

人種差別から生じた誤解で犠牲になられた方々です。

ひとり ひとり に名前があります。家族がいます。友人・知人がいます。

ひとり ひとり の名前を知りたい、背景を知りたい。と思っていたら、「スポニチ」(2020年9月13日8:04配信)に書かれていました。

☆ブレオナ・テイラーさん(1回戦)
3月に米ケンタッキー州の自宅で就寝中に薬物事件の捜索のためアパートに突入した白人警官に射殺された。救急救命士で当時26歳。


☆エリジャ・マクレーンさん(2回戦)
19年8月に米コロラド州でコンビニで買い物をして徒歩で帰宅中に不審者とみなされて警察官に拘束された。首を絞められ精神安定剤を注射されて心肺停止状態となり、数日後に病院で死亡。当時23歳。


☆アマード・アーベリーさん(3回戦)
2月にジョージア州でジョギング中、白人男性にトラックで追い掛け回されて射殺された。当時25歳。


☆トレイボン・マーティンさん(4回戦)
12年2月にフロリダ州でヒスパニック系の自警団員に射殺された。当時17歳の高校生。


☆ジョージ・フロイトさん(準々決勝)
5月にミネソタ州で白人警官に暴行されて死亡した。当時46歳。首を地面に押し付けられ「息ができない」と訴える動画が拡散したことで「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」のスローガンを掲げるデモが全米に広がった。


☆フィランド・キャスティルさん(準決勝)
16年7月にミネソタ州で警官に射殺された。自動車の後部ライトが壊れていたために呼び止められ、免許証を取ろうと手を伸ばしたところを撃たれた。私立校の食堂責任者で当時32歳。


☆タミル・ライス君(決勝)
14年11月にオハイオ州で銃のようなものを所持した少年がいるとの通報で駆け付けた警察官がライス君に発砲。手にしていたのはエアガンと判明した。当時12歳。

そもそも、殺されていい いのち はありませんが、

ひとり ひとり の名前と、殺害された背景を見ると、誰一人として殺される理由なんてありません。

ひとり ひとり に家族がいて、友人・知人がいる。

マスクに描かれた人生は7人ですが、こころ引き裂かれる悲しみに身を置く人は、その何倍もの人に広がります。

そのことに想いを広げなければいけません。

 ☆

決勝戦の相手のビクトリア・アザレンカ選手は、ベラルーシの出身なのですね。

8月9日に大統領選挙が行われたベラルーシでは、現職のルカシェンコ氏が当選し、6選を決めました。

しかし、選挙に不正があったとし、今でも抗議活動が続き、数十人が拘束されています。

ルカシェンコ氏は、1994年から大統領に就いているそうですが、経済政策や人権問題について、市民からの批判が上がり続けているそうです。

どこの国においても、人権の問題が起きています。

アザレンカ選手はアザレンカ選手として、いろいろな想いを抱えて、大会に臨んでいたことと察します。

大坂なおみ選手が、被害に遭われた方々の名前が書かれたマスクをして大会に出たときに、「差別問題や政治の問題をスポーツに持ち込むな」という声も挙がった。

差別問題や政治をスポーツの世界に持ち込むこと自体が、本当に嫌いな人もいることでしょう(差別問題・政治の問題に無関心というわけではなくて)、

彼女のことを考えて、「持ち込むな」と言う人もいることでしょう、

けれど、人の世はすべてがつながっているもの。

差別問題、政治の問題とは別にスポーツの世界があるわけではありません。

現に、オリンピック・パラリンピックも、政治に介入されています。

今までも、開催地や、開催時の世界状況によって、ボイコットなども起きています。

国と国との争い(政治)の方が、スポーツの世界に踏み込んできて、差別を煽っている現実もあります。

選手だって、本来は自分のパフォーマンスを最高の形で出し切ることに集中したいのではないでしょうか。

でも、それをさせない。周りがさせない状況を作っている。のではないでしょうか。

「持ち込むな」というならば、持ち込む必要のない環境・状況(選手がプレーに集中できる環境)になることを願って、差別問題について知り、考え、語ることが先決ではないでしょうか。

選手寿命の限られているスポーツ選手。

最高のパフォーマンスを発揮することに集中させてあげたい。

けれど、それを許さない状況を作っているのもまた、私たちなのかもしれません。

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