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2017年1月19日 (木)

久寿

神奈川県小田原市で、生活保護受給者の自立支援を担当する職員が、「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)や「不正受給はクズだ」という趣旨の英文が書かれてジャンパーを着て、勤務していたことが分かり、市長がお詫びのコメントを出しました。

「ひどい話だ」という声が上がる反面、「不正受給をするほうが悪い」という声も聞こえてきます。
このようなジャンパーを作り着るきっかけになったのは、生活保護の受給資格を失った男性が、市役所で、職員2人をカッターで切りつけることだそうです。きっかけの話を聞くと、「そんなジャンパー作りたくもなるよね」と思う方もいるかもしれません。でも、すべての生活保護受給者が、悪意を持っているわけではなく、生活保護を必要とする環境・背景・理由があるわけです。「不正受給はクズだ」というメッセージを、はじめから全面に押し出すということは(ジャンパーを着るということは)、生活保護受給者・これから受給を必要とする方すべてに対して発しているということになります。
より気になった文は、「私たちは正義だ。不正が発覚したときは追求する」という趣旨の英文です。不正が発覚したのなら、それが本当かどうか調べることは、職員の方々のお仕事でしょう。でも、「追求」は言い過ぎではないでしょうか。
また、生活保護をもらっておきながら、タバコやお酒の嗜好品を求めたり、パチンコなどの遊興費に使うと、バッシングを受けます。それも、不正の内容のひとつかもしれませんが、「生活保護を受けながら、そんなことにお金を使ってんのか!!」と怒れば済む話でもありません。以前、日本にもカジノができるかもしれないというニュースに対し、「依存症」について書きました。嗜好品も遊興費も、その依存から抜け出せないのです。「生活保護をもらっているし、こういうことにお金を使っちゃいけないな」と、思っている方もいることでしょう(思わない方も、もちろんいるかもしれません)。しかし、そう思ったからといって、すぐに止められるのであれば、本人も苦労はないことでしょう。嗜好品や遊興への依存状態にあるがゆえに、生活保護を必要とする状況になってしまった。そういう方もいるのではないでしょうか。生活保護の不正使用や、生活保護を受けることそのものを見下す方もいますが、どうしてそうなったのか?まで見る(考える)人はいません。意志の弱い人が、依存状態に陥るのではありません。誰もが、何かに依存しながら生きているのではないでしょうか。嗜好品や遊興の人もいます。家族や恋人という人もいるのではないでしょうか。でも、関係が上手くいっていれば依存対象のためにがんばろう!という気持ちも湧きますが、関係が崩れると、やはり他の何かに依存し(その場合に嗜好品や遊興でしょうか)、お金の使い方が狂ってしまうのではないでしょうか。「明日は我が身」という意味で言うのではなく、誰もが生活保護を頼りとすることが有り得ると思います。それなのに「不正受給はクズ」という表現は、「自分はそうはならないけどね」という上から目線の気持ちが詰まっています。「私たちは正義だ」という感覚は、目の前の人だけでなく、私自身をも見えなくしてしまいます。

このニュースを受けて、こんなことがありました。
昨年日本中を席巻した「保育園落ちた日本死ね」のことば。
(その表現に嫌悪感を抱く方も多くいましたが、私は、ことばが生まれた背景を想うと、「“死ね”ということばは良くない」というきれい事でかき消してしまうようなことばではないと受けとめました。この「死ね」は、「生きたい」「一緒に生きたい」「一緒に生きよう」という想いの裏返しですから。)
「日本死ね」ということばやその発信者に対し、「そういう言葉遣いは許せない。子どもが保育園に入れないのは、そんなあなたにも原因があります」と言っていた方が、今回の「不正受給はクズだ」に対しては、「それぐらい言って当然です。職員さんは職務を全うしていると思います。」と言っていました。
自分の主張するところに反すれば「人を蔑むことばだ」と罵り、自分の主張と合致すれば「よくぞ言った!」と誉め讃える。ホント、私は自分に依存して生きています。だからこそ、自分が正義でないと困るのですね。

今回の投稿は、ちょっと正義に立ったつもりになってしまったかもしれません。

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