一如のいたみ③
③ジャータカ物語
山本美香さんのいのちと、シリアの人々のいのち…「編集手帳」を読みながら、『ジャータカ物語』の「行者とタカ」の話を思い出していました。
「ジャータカ物語」をご存じですか? お釈迦さまの前世物語と言われています。
お釈迦さまは、人間として生まれ、その生涯においてさとりを開き、ブッダ(仏陀:覚者…目覚めた者・さとりをえた者)となられました。
しかし、ひとりの人間として生きるわずかな時間の中では、さとりを開くまでの歩みをすることは不可能である。その前世において、語り尽くせないほどの善行を行っていたからこそ、シッダールタ王子として生まれたときに覚者となられたのであるという考えに基づいて語られたお話です。
その前世は、人間の姿だけとは限りません。いろいろな動物や、さまざまな立場の人間として、前世を生ききられました。
数ある「ジャータカ物語」の中に、「行者とタカ」というお話があります。
ある日、タカに追われたハトが行者(修行者)のもとへ逃げ込んできました。
かわいそうに思った行者はハトを助けようとします。
ハトを追いかけてきたタカは行者に迫ります。
「行者よ、あなたはハトの命を救い、良いことをしたつもりでいるかもしれないが、ハトの命を救うということは、ハトを食べなければ死ぬこの私、タカの命を見殺しにすることになるのですよ。ハトは救って、私は見殺しにする気ですか?」
困った行者はハトもタカも殺さずにすむ方法はないかと悩みます。
そしてタカに訴えます。
「タカよ、ハトと同じ重さの私の肉をお前にやろう。それで、このハトを助けてくれないか?」
「それなら いいだろう」とタカは応えます。
すると行者は、天秤の一方にハトを乗せ、もう一方に自分の肉を切り取って乗せはじめました。
小さな軽いハトだから、チョット乗せれば充分だろうと思っていましたが、いくら肉を切り取って乗せてもハトの方が重くて、同じ重さにはなりません。
ついに行者は自分の胸に刃を突き刺し、全身を天秤の片一方に横たえ、そうしてやっと同じ重さになりました。
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