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2007年8月15日 (水)

私が私でなくなる日

去る8月12日(日)、西蓮寺仏教青年会「白骨の会」、8月の企画として、九段下にある「昭和館」と「しょうけい館」に行ってきました。
  
「昭和館」は、昭和の様子(主に戦中・戦後)を今に伝え、その労苦を知ってもらいたいという願いが込められた施設。平成の世も、いつの間にか19年。平成生まれの子が、大学に通う時代。昭和の世って、ちょっと前のことのようだけれど(私だけ?)、時間は確実に経っているんだなぁと感慨深くなりました。
「しょうけい館」とは、戦傷病者史料館のこと。戦傷病者等が体験した戦中・戦後の労苦を後世に語り継ぐ施設。義眼・義足・義手の展示から、戦争の生々しさを感じました。
両施設とも、初めて行きました。行こう行こうとは思っていても、なかなか一人ではいけないもの。私の独断で今回の企画を計画し、3名の方が参加してくださいました。ありがとうございます。
  
「昭和館」で耳にした戦中の音楽・展示されている当時の雑誌。戦争賛美の語句が目に付きます。作詞家・作曲家・著者の名前に目をやると、「えっ、この人が書いてるの!?」と思うような人も。
で、思いました。
この人たちは、戦争賛美の音楽や文章を書かなければならなかったんだなぁ。本心か偽りかは分からない。でも、書かざるを得ない、あるいは、そういう心境にさせてしまう、特殊な時代だったんだなぁ。
現代、真宗における教学者が残した、戦時中の戦争賛美を思わせることばを取り上げて、「この○○は(呼び捨て)、こんなことを言っている。許せない」というような批判を言う人がいますが、それは批判にならない批判です。
自分の思想をも捻じ曲げられてしまう、個人の善悪の判断を許されない状況。それが、戦争。
 
親鸞聖人は言われました。
さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし(『歎異抄』第13章)
人間とは、そうせざるを得ない状況に身を置かれたら、何をしでかしてしまうか分からない存在である。人の物を盗み、人を傷つけ、殺してしまうこともある、と。

聖人のこのことばを説明しようとしたとき、その自分こそ、ことばを真正面からいただいているのか?  と、自身に問うことがある。
聖人のこのことばを説明しようとしたとき、「いや、たとえどんな状況になっても、私はそんなことはしません」と、言い返されることもある。
そう、「さるべき業縁」がもよおしてないときに、あたかも「さるべき業縁」がもよおしたかのように語るから、この大切なことばが、軽くなってしまうのです。

「昭和館」「しょうけい館」を見学していて思いました。戦争というのは、さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもしてしまう時・状況なんだということを。
平和と言われている今の世なら、「たとえどんな状況になっても、私は」人の道を踏み外すことをギリギリ思いとどめることができることでしょう。しかし、戦争とは、まさにさるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべき世なのです。私が私でなくなるのです。いや、見方を変えると、私がむき出しになるのかもしれない。
   
終戦記念日です。
夏になると、戦争反対の声が大きくなります。私も、戦争反対です。
しかし、戦争反対の声が叫び続けられるということは、戦争の影が常にあり続けるということの裏返し。「戦争反対」のことばが消えたときこそ、真の平和なのかもしれない。

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コメント

私も、常に戦争反対です。
反対意見でもなく、厭世観でもないのですが、自戒も含めて、今の世の中にもあてはまるのではないかと、さるべき業縁における心・行いのありよう、思う時もあります。
まだまだ、勉強にもなっていない身ですが、問い続ける真宗の有り難さを、感じるものです。
教わったこと・体験できる場所教えていただき、有難うございます。

☆tanukiさんへ
武田泰淳さんという方のことばが好きです。
「平和運動は大事だ。平和運動は非常に大事だ。大事だけれども、平和運動をやる人間が忘れてはならないことばのひとつに、
『わがこころのよくて、ころさぬにはあらず。また害せじとおもうとも、百人千人を殺すこともあるべし』(『歎異抄』第13章)
ということばを肝に銘じて平和運動をやらなければ、ほんとうの平和運動にならない」 

何事も、自分抜きではいけないのですね。
いや、自分がハッキリしていれば、声を大にして運動をする必要もなくなるのでしょう。

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