祝・男児お誕生
男児のご出産を望まれているご夫婦がいらっしゃいました。
そのご夫婦には、跡取りとなるお子様の誕生が期待されていました。
誰もが「お子様はまだですか?」「男児はまだですか?」と声をかけます。当のご夫婦こそ、一番気にされているのに、一番望まれているのに。
そのご夫婦のご心労はどれほどのものだったでしょう。
そのご夫婦のプレッシャーはどれほどのものだったでしょう。
ご夫婦は、占い師に尋ねます。
「私たちが子どもを授かることはあるのだろうか…」
「ご安心ください。お子様を授かることでしょう。
ただし、山奥に住む仙人がお亡くなりになられて、その生まれ変わりとしておふたりのお子様は誕生いたします」
夫は山奥の仙人に遣いを出します。
「仙人、お前のいのちは あと どれほどだ」
「私の いのち はあと3年でございます」
それを聞いた夫は3年も待ってはいられないと、山奥の仙人に刺客を出して…殺してしまいます。
仙人が亡くなられて、夫人は懐妊されます。
喜んだご夫婦は、占い師に尋ねます。
「私たちの子どもは、男か?女か?」
「お喜びください。男の子でございます。
ただし、その男の子は成人して後、父上と母上を殺害されることでしょう」
ご夫婦は驚かれます。
せっかく授かった子どもですが、成人してから殺されてはかないません。
いよいよ出産というとき、高いヤグラを立て、ご夫人はそこから赤ちゃんを…産み落としてしまいます。
幸い赤ちゃんは小指を折っただけで、いのちは助かりました。
自分たちを殺すかもしれない…しかし、自分たちが待ち望んで授かった子どもです。姿を見たら、可愛くて仕方ありません。私たちはなんてことをしてしまったんだ。
ご夫婦はお子様を大事に大事に育てられました。
ご夫婦のしたこと、ひどいことだと思われますか?
そのご夫婦のご心労はどれほどのものだったでしょう。
そのご夫婦のプレッシャーはどれほどのものだったでしょう。
その心労やプレッシャーを与えたのは、果たしてだれでしょうか?
夫の名は、ビンバシャラ王
妻の名は、イダイケ
お子様の名は、アジャセと言います。
「王舎城の悲劇」というお話として、現代にも語り継がれています。
お釈迦さま在世、2500年ほど前のお話です。
2500年ほど前のお話です。今のお話かと思われました?
人間の業は、昔も今も変わらないものですね。
※今日の文章も、一楽先生のお話を聞いて書いているものです。
一楽先生が「王舎城の悲劇」のお話をされたので、元々今日書くつもりでいました。
世の出来事に合わせるつもりはまったくありませんでした。偶然というか、これも縁ですね。
お子さまのお誕生、おめでとうございます。
(余談)
昨日の新聞の朝刊に「紀子さま きょうご出産」という見出しが出てました。
「きょうご出産予定」でも「きょうご出産か!?」でもなく、「きょうご出産」という見出しがとても不自然に思えました。
帝王切開だから「きょうご出産」で良いわけですが…。
そんなこと考えるのは、私だけでしょうか。
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ビンバシャラ王とイダイケ夫人との間にアジャセ太子の誕生! 「悲劇」の因縁となったのだから、これは不幸。しかし浄土の縁が熟すことになったのだから、これは吉祥。と、分別してしまうのが我らですが、本当は全てが吉祥でしょう。吉祥とは言っても苦悩が無いのではなく、王舎城の方々は言語を絶する大苦悩の生涯を送られたのでしょう。その苦悩を引き受けたところに、自分たちの思いを超えて、時代を超えて還相のはたらきを為さしめられている。「観経」の浄土真実の彰隠密の教法が、「涅槃経」の五逆の救済の事実が今日の我らに届けられている。王舎城の方々を善導は「実業の凡夫」とされ、親鸞聖人は「権化の仁」とされましたが、どちらも本当でしょう。「実業の凡夫」がそのまま「権化の仁」としてはたらかしめられる。一切が我らの思いを超えた本願力回向でしょう。
投稿: やす | 2006年9月 7日 (木) 23:07
☆やすさん こんにちは
「王舎城の悲劇」って、今でも強い力でもって私たちに訴えかけてきますね。
私たちの思いをはるかに超える苦悩の数々。そこから見えてくるものがある。
人間の業が2500年前も今も変わらないのではなくて、苦悩を超えて生きていくという、そういう生き方しかできないというところが、不変なのですね。
そのような人生を歩めるのは、本願力回向があるから。つまりは、私一人がいるという事実が阿弥陀さまのはたらきの証明ですね。
投稿: かつ | 2006年9月 8日 (金) 11:41
こんにちは。
「きょうご出産」でいいのですよ。
それまでに急な大出血があれば、「きょうご出産」にはならなかったのですから。
何の予兆もなく急に大出血を起こすこともあるそうです(何リットルも)。
ご予定していた日に出産できるのはとても羨ましいことです。
私はべんちゃんのとき、手術を予定していた日(予定日より2週間ほど早い)より3週間ほど前に出血があり、結局は当初の予定日より2週間早くオペすることになりました。
もちろん、早産です。
そういう意味で、「きょうご出産」はとてもすばらしいことなのです。
投稿: おっきなソファ | 2006年9月 8日 (金) 18:13
☆ソファさん お久しぶりです
私は、予定日より3週間ほど早く生まれました。妹は一ヶ月近く早く。母が直前まで寺のことで動き回っていたものですから。よく育てていただいたものです(-人-)
投稿: かつ | 2006年9月 8日 (金) 20:38